2月3日(木)晴
空は青く辺りは真っ白な雪景色が広がっていた。 電車から駅に降り立つ。空気が冴えていて肌が張りつめる。ひらけた視界には素晴らしいアルプスの山々が広がる。最高の気分になれるシチュエーション
・・・だが、夜行列車の旅の疲れからか、気分がとても悪く感動する余裕があまりなかった。
予定ではこのまま11時発のベルニナ急行に乗ってイタリアへ抜けようと考えていた。急ぐのには理由があった。ベルニナ急行は冬期はオフシーズンで週に1本しか運行しておらず、それがこの日だったからだった。
だが考え直した。夜行列車で過ごしてさらに列車の旅を続けるのはやはりしんどい。今夜はここで一泊宿をとろう。
「でもベルニナ急行をあきらめるのはおしいなぁ。」
時刻表と路線をあらためて駅で確認したら、おや?と思うことがあった。
たしかにベルニナとされている列車は1本しかないのだが、同じ行先であきらかに同じ路線を走るっぽい列車が何本かあるではないか。例えベルニナ急行ではなくても同じ路線を走る列車なら同じ風景が見れるはず。そこで明日はそいつに乗ることにした。
とにかく今日はもう休みたい。
まず駅の両替所で5000円程両替をした。レートは1SF=約69円。それから駅の荷物預けに荷物を預けて宿探しにでた。サンモリッツにもユースホステルがあるが、人気のYHらしく今はスキーシーズン、おそらく一杯であろうと思ったがダメ元で訪ねることにした。ガイドブックでYHの位置を確認。駅からは距離があるようだが観光がてらにのんびりと歩いていった。
サンモリッツは街の真ん中には大きな湖がある。すっかり凍っていて、その上を人が歩いていた。湖を囲むように建物が並んでいる。ビルのような大きな建物はない。そしてまわりは360度アルプスの山々。駅とは湖を挟んで反対側にあるYHまでの道のりはあっという間だった。 オレンジ色の外壁の近代的な建物だった。入り口はこれからスキーにいく学生達でにぎわっていた。予想通 りYHは大変な込みようだった。中学生ぐらいの子供の団体が泊まっているようだった。
2階にあがったところにレセプションがあり、ヨーロッパでは珍しく土足厳禁の張り紙があった。今夜泊まれるか聞いたらラッキーなことに空きがあるとの返事が返ってきた。チェックインは夕方からなので予約だけした。とりあえず今夜の宿は確保できたのでほっとした。
駅に預けた荷物を取りに行きがてらに市内観光へ。さすがに山岳リゾート。スキー客が沢山いてにぎやかだ。私もレンタルしてやろうかとも考えたが無駄な失費だと思い止まった。リゾート地だけあってホテルの数は多くお城のような4つ星ホテルなどもあった。街中の各所には誰が作ったのか大きな雪の彫刻があった。
おなかが空いたので近くにあったお総菜屋さんに入り、おいしそうな料理が並んでいる中からラザニアを買った。量 り売りで9.5SF(690円)。
外で適当に腰掛けて食べた。うん、おいしい。スイスでイタ飯っていうのもなんだけど。
一通り街中を歩いてしまうとやることがない。そこで列車に乗って隣の街などにも行ってみたが面白いものはなかったのでとんぼ返り。日本語のメニューも掲げている駅のカフェに入ってみた。4席しかないカウンターに座りコーヒーを飲みながらはがきを書いて時間を潰した。
駅のカフェ
夕方、荷物をもってバスで宿に戻りチェックイン。部屋を決めるにあたり、受付のおばさんは口を濁していた。話によるとどうやら空いている部屋が普通の部屋ではないらしい。
「男女の相部屋になってしまうけど・・」
何でもいいよと案内してもらった部屋は地下にあり、倉庫を改造したような暗く簡素な部屋だった。しかし宿泊料をだいぶ安くしてくれた。このユースはめずらしく朝夕2食付きで、私が支払ったのは34Sf(約2346円)だった。
部屋には一人の男の子がいた。彼はGregと名乗った。Gregは同い年でかなりイケメン人見知りをしない愛嬌のあるにーちゃんだった。
夕食は満足のゆくものだった。野菜の入ったスープがおいしくてお替わりした。食堂は広く、学生さんでにぎやかだった。老夫婦などいろんな人が宿泊していた。
シャワーは上の階にあるシャワーを使ってと言われていたので上に昇った。上のフロアの部屋はずいぶん整っていて全然違った。シャワーは個室に別れて複数あった。
部屋に戻って就寝準備。 Gregはガールフレンドと遊びに行ってくると言って出かけていった「帰りは遅くなるから」ってな1言を残して。ドーゾごゆっくり。出かけ際にチョコレートをくれた。餌付けされる私。
さぁ明日はイタリアだ
サンモリッツYHの朝食
ベルニナ急行
2月4日(金)晴れ
「駅に行くのかい?乗せていくよ」
翌朝、歩いてバス停に向かっていると通 りすがりのワゴン車から声をかけられた。ありがたく助手席に乗せてもらった。後ろには奥さんと子供が二人乗っていた。ワゴン車のフロントガラスはすっかり凍りついていて全然前が見えない。おじさんは窓の氷を削りながらわずかなすき間から前をみて運転をしていた。「very デンジャラス」
駅でお父さんと握手をして別 れた。「良い旅を」の一言に感動した。朝からハッピーな気持ちになった。 列車が来るまで時間があるので昨日の喫茶店に入ってコーヒーを注文した。あたりを観察。テーブルにはパンが置いてあるが、あれは勝手に食べていいのだろうか・・・?ふと店の人が“チャオChao” といって挨拶を交わすのを疑問に思って尋ねてみた。チャオはイタリア語の“こんにちは”だ。スイスはフランス語圏。いったいここでは何語が話されているのかと。
“ここではいろんな国の言葉が話されているよ”
その車窓風景がすばらしいと有名なベルニナ急行はサンモリッツからイタリアの国境の町ティラノの間を走っている。赤い車体の設備の整った列車だ。絶賛されているのは春から夏にかけての風景で、冬の間はどうなのかの情報は手に入らなかった。オフシースンの冬は1週間にたったの1往復しか走っていない。(でもベルニナ急行と同じ線路を走る普通列車はあるみたい)
11時発では遅いので9時発の普通の列車に乗った。列車はがらがらで1車両私1人で貸し切りだった。
車窓風景は充分にすばらしいものだった。
アルプスの山々、凍った泉、緑の自然も時折見られた。
イタリアのティラノまでの2時間、飽きることなく楽しめた。
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